リフォーム費用の税務上の取り扱いを理解する
賃貸住宅経営を行う上で、リフォーム費用は必要不可欠の支出です。
建物や設備の不具合を修繕したり、雨漏りを直したり、外観の見栄えをよくするために外壁を塗り替えたり、入居促進のために新設の設備を導入したり…賃貸住宅を経営していく中で、様々な事情で、リフォーム費用が発生してきます。
そこで、問題になってくるのが、リフォーム費用がどの程度、その年の経費として認められるかということです。
経費として認められる額が多ければ多い程、その年に支払う所得税・住民税が少なくなります。
リフォーム費用は他の経費と比べても、金額が高くなる傾向があり、賃貸住宅経営への影響が大きく出てきます。
今回は、賃貸住宅のオーナーには、是非とも知っておいていただきたい、リフォーム費用の税務上の取り扱いについて、解説したいと思います。
リフォーム費用の「修繕費」と「資本的支出」の違い
リフォーム費用は、税務上、「修繕費」としてその年の経費とするか、「資本的支出」として固定資産の取得原価に加算されるか、のいずれかに分類されます。
「修繕費」とは、建物や設備の修理や改良のためにかかった支出のことで、税務上、支出した年の経費とすることが出来ます。
例えば、リォーム費用として200万円かかった場合、その年の経費として200万円全額計上できるということです。
具体的には、雨漏りの修繕や内装の原状回復費用などです。
一方、「資本的支出」は、建物や設備の価値や機能を高めるため、耐用年数を伸ばすための支出です。
税務上、固定資産として扱われるので、その建物の耐用年数で割った額のみがその年の経費となります。
例えば、耐用年数47年の鉄筋コンクリート造の建物の場合、リフォーム費用が200万円かかったとしても、年間4万円程度しか経費することができません。
具体的には、建物に新しく非常用階段を取り付ける費用など建物の性能を向上させるための費用が該当します。
このように、リフォーム費用を支出した場合、「資本的支出」ではなく「修繕費」として処理した方が、所得税・住民税の納税額が減り、多くのお金を手元に残すことが出来ます。
つまり、キャッシュフローがよくなるということです。
しかし、リフォーム費用が「修繕費」と「資本的支出」のどちらに該当するかについては、細かい基準があります。
その基準を無視して、税金を減らすために意図的に「修繕費」に計上すれば、それは、利益操作とみなされることになります。
賃貸住宅のオーナーとして、どのようなときに「修繕費」とされ、どのようなときが「資本的支出」となるのかをきちんと理解していなければなりません。
「修繕費」か「資本的支出」か、判断基準は…
リフォーム費用が経費になるかどうかの判定は、「その工事が実質的にどのようなものなのか」という観点から判断します。
ただ、実質的にはどのようなものだったかを判断するのは簡単ではなく、実務上は、下記のフローチャートにあてはめて、「修繕費」に該当するか、「資本的支出」に該当するかを判断していきます。
リフォーム費用を正しく「経費」にする方法
「修繕費」としてその年の経費にできるものをまとめると以下の4点になります。
【1】一度に要する工事の支出が20万円未満のもの
【2】3年以内の周期で生じる支出(定期的、頻繁な修繕が必要なもの)
【3】通常の維持管理や原状回復に必要なもの
【4】一度に要する費用が60万円未満、あるいは前期末の取得価格の10%未満のもの
賃貸住宅オーナーとしては、この4点を踏まえて、リフォーム費用を正しく「経費」にしていく必要があります。
そのためには、リフォーム工事の見積書を受け取る場合でも、工事内容をできる限り細分化してもらい、項目ごとに区分してもらうことがポイントです。
見積書事例①は、リフォーム工事1式での見積りです。
これでは、「修繕費」なのか「資本的支出」なのかが判別できず、450万円全額「資本的支出」として、計上しなければならない可能性が高くなります。
一方で、見積書事例②のように、細かく見積りを分けた場合は、「修繕費」と「資本的支出」にそれぞれ区分して計上できるので、その年に経費にできる金額を大きくすることができます(今回の事例では「修繕費」が375万円、「資本的支出」が75万円に)。
キャッシュフローの違いはどの程度出るか!?
最後に、リフォーム工事を行った場合に、全額「修繕費」としてその年の経費にした場合と、「資本的支出」として減価償却した場合とで、どの程度納税額に差が出るのか、また、キャッシュフローはどの程度変わってくるのかについて、比較をしてみます。
以下のような事例で比較してみます。
◎築25年の鉄筋コンクリート造(耐用年数47年)を800万円かけてリフォーム工事を実施した場合
◎全額「修繕費」の場合の年間経費
→800万円
◎「資本的支出」の場合の年間経費
→18万円(800万円×0.022)
◎年間の家賃収入返済額・経費等
①家賃収入 1,500万円
②借入金返済額 500万円(元金返済
額350万円、利息返済額150万円)
③減価償却費 300万円
④その他経費 100万円
今回の事例でもわかるように、所得税・住民税を支払った後のキャッシュフローに200万円以上差が出ることがわかりました。
このように、「修繕費」と「資本的支出」の区分の仕方をしっかりと理解することで、手元にキャッシュを多く残すことができる賃貸住宅経営を実現することができます。
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