所得税の仕組みを知ることで、キャッシュフローが改善できる
個人で賃貸経営をする場合、所得税については、しっかりとした知識を身に付けるべきです。
というのは、所得税の仕組みを知ることによって、所得税を差し引いた後の手残り収入(キャッシュフロー)をしっかり残すためのポイントが理解でき、事前の対策を打つことが出来るからです。
特に、所得税を計算するうえでとても重要な「減価償却費」に関しては、その仕組みと内容をしっかりと理解していきましょう。
そこで、今回は、「減価償却費」に関して、重要と思われるポイントを解説していきます。
不動産所得はどうやって決まるのか
賃貸経営で利益が出た場合、所得税を支払いますが、所得税は、賃貸経営によって得られた「不動産所得」に対し、一定の所得税率をかけ金額が課税されます。
「不動産所得」は、以下のように計算されます。
不動産所得=総収入金額-必要経費
「総収入金額」に含まれるものとしては、①家賃、地代 ②権利金 ③礼金 ④更新料 ⑤共益費 ⑥返還を要しない敷金・保証金があります。
「必要経費」として「総収入金額」から差し引くことができるものは、①固定資産税、都市計画税 ②事業税 ③消費税 ④借入金の利息 ⑤収入印紙代 ⑥修繕費 ⑦損害保険料 ⑧管理手数料 ⑨広告宣伝費 ⑩税理士、弁護士への報酬 ⑪減価償却費 などです。
住民税や所得税、借入金の元本返済部分や事業に関係のない支出(例えば、自宅関連の費用など)は「必要経費」としては認められません。
また、「減価償却費」は、法律で決められた耐用年数に応じて、毎年一定額を「減価償却費」として経費とすることができます。
「減価償却費」は、実際の支出を伴わない費用ですので、「減価償却費」が大きくなればなるほど、「不動産所得」は少なくなり、それに伴って所得税の負担は少なくなります。
「減価償却費」をいかに多く計上できるかということは、キャッシュフローを多く残すための税務対策として重要な要素といえます。
■減価償却費の押さえるべき4つのポイント
「減価償却費」について少し深堀りしていきます。
「減価償却費」は下の計算式で計算します。
減価償却費=取得価格×償却率(償却率は耐用年数により決まります。耐用年数は建物構造によって異なります)
「減価償却費」について正しく理解し、ポイントを押さえていくことで、賃貸住宅購入後に思ったほどキャッシュフローが残らないといった失敗を防ぐことができます。
そのためには、次に示す「減価償却費」の4つのポイントを理解しましょう。物件を購入する前に最適な対策を打ちやすくなります。
①
建物の構造によって耐用年数と償却率が定められている
「減価償却費」は、償却率をかけることによって計算しますが、その償却率は、耐用年数によって決められており、耐用年数は、建物の構造によって下の表のように細かく分けられています。
このことから、建築する(または購入する)建物の構造によって、毎年計上できる「減価償却費」が大きく変わるということがわかると思います。
では、構造の違いによって、どの程度「減価償却費」に違いがでるのかを計算してみます。
建設費5,000万円の建物の減価償却費を、木造、RC造でそれぞれ計算してみます。
【木造】5,000万円×0.046=230万円
【RC造】5,000万円×0.22=110万円
RC造は木造の半分も「減価償却費」を経費として計上をすることができません。
「減価償却費」が少ないということは、所得税の負担は、木造にくらべRC造の方が大きくなります。
そのエリアで建築する(購入する)構造は何がベストなのか、所得税などの税金の負担も考慮した上で
検討していくべきです。
②土地には減価償却がない
土地は、建物のように年数の経過に伴って価値が落ちることがないので、減価償却できません。
土地建物の取得費が同じでも、土地の価格の比率が高いと建物の「減価償却費」が少なくなり、結果的に支払う所得税が増える結果になります。
たとえば、土地建物の価格が1億円の木造のアパートを購入したケースで比較してみます。
【土地価格6,000万円、建物価格4,000万円の場合】
土地の減価償却費:0円
建物の減価償却費:4,000万円×0.046=184万円
【土地価格4,000万円、建物価格6,000万円の場合】
土地の減価償却費:0円
建物の減価償却費:6,000万円×0.046=276万円
同じ取得費、同じ利回りだったとしても、「減価償却費」が少なければ、所得税の支払いの違いでキャッシュフローに大きな差が出てきます。
③デットクロスに注意する
不動産投資におけるデットクロスとは、ローンの元金返済額が「減価償却費」を上回る状態のことをいいます。
デットクロスが起こると、支払う所得税が増え、資金繰りが悪化してしまい、損益計算上は黒字でも、キャッシュフローは赤字になってしまうこともあります。
つまり、ローン返済後に残る収益から所得税を支払うことができなくなる状態のことをいいます。
そのようなケースでは、最悪の場合、黒字倒産に陥ってしまうリスクがあり注意が必要です。
利回りが低い物件を、全額ローンなどで購入するような場合は、ローン返済後の手残りが非常に少なくなります。
そのようなケースで、デットクロスが起こると、手元に残るキャッシュ以上に所得税を支払わなければならない状況に陥ってしまいます。
デットクロスに対応するためには、ローン返済後にも十分な手残りがある高い利回りの物件を購入する、
または、利回りが低い物件の場合は自己資金を投入しローンの比率を下げるなどの事前の対策が重要です。
④中古物件の減価償却費を理解する
中古物件の場合は、新築の場合と違う「減価償却費」の計算をします。
中古住宅の耐用年数の計算式は以下の通りです。
①物件の築年数が法定耐用年数を超えていない場合の計算式
法定耐用年数-経過年数+経過年数×0.2=取得時の耐用年数
【具体例】
法定耐用年数:34年(重量鉄骨造)
築年数:15年
34年-15年+15年×0.2=22年
②物件の築年数が法定耐用年数を超えている場合の計算式
法定耐用年数×0.2=取得時の耐用年数
【具体例】
法定耐用年数:22年(木造)
築年数:25年
22年×0.2=4.4年≒(小数点以下切り捨てで)4年
具体例でも示したように、中古物件の場合は、償却期間が短くなります。
その分、償却期間内の減価償却費は大きくなり、その期間内は大きな節税効果があります。
一方で、償却期間が終了すると建物の減価償却が一切できず、一気に不動産所得が増え、大きな税負担となりキャッシュフローが悪化することが考えられます。
中古物件を購入する際は、そのような減価償却の仕組みを理解した上で、所得税の計算もした上での購入計画を立てていきましょう。
最後に
「減価償却費」の4つのポイントを理解すれば、賃貸経営で、しっかりとキャッシュを残すために、どのような構造の物件を購入すべきか、どの程度の自己資金を投入すべきか、最低どの程度の利回りの物件を購入すべきかという対策を事前に打つことができます。
是非とも、みなさんには、手元にしっかりとお金が残る賃貸経営を実現するためにも、「減価償却費」について理解を深めてもらいたいと思います。
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