賃貸住宅はなぜ相続税対策になるのか!?
みなさんも、賃貸住宅は相続税対策になるということを聞いたことがあると思います。
相続税は亡くなった方の遺産に対して課税される税金です。
相続税を減らす方法の一つに、「遺産を減らす、相続税評価額下げる」という方法があります。
例えば、贈与などを活用して次世代に資産を移して遺産を減らす、賃貸住宅を建てることで相続税評価額を下げる、生命保険に加入することで非課税枠を増やすなど、「遺産を減らす、相続税評価額を下げる」対策には様々な方法があります。
「賃貸住宅を建てると相続税を減らせる」ということが、どのような仕組みによって可能になるのか、具体的な計算方法を示しながら、その仕組みについて解説していきたいと思います。
土地と建物の相続税評価額はどのように算出するのか?
①土地の相続税評価額
土地の相続税評価額の計算方法には、路線価方式と倍率方式とがあります。
路線価方式は、国税庁が出している路線価に土地の面積を掛けて計算する方式です。
一方、倍率方式は固定資産税評価額に一定の倍率を掛けて計算する方式です。
都心や市街地などにおいてマンションや戸建住宅、賃貸住宅、店舗などがたて並んでいる土地には路線価が設定されています。
路線価が設定されている地域は、路線価方式で計算します。
一方、郊外で農地が広がっているような土地は路線価が設定されていません。
そのような地域では倍率方式で計算されます。
ちなみに、路線価は、時価の約80%を目途に定められており、時価が坪単価50万円の土地の路線価はおおむね40万円で設定されています。
②建物の相続税評価額
建物の相続税評価額は市町村が固定資産税を徴収するために評価する固定資産税評価額をそのまま利用します。
固定資産税評価額は、「固定資産税評価基準」に基づき市町村の職員により評価されますが、新築の場合は、おおむね建設費の40%~60%の評価額となります。
賃貸住宅が建てられている土地の評価額は!?
駐車場などの更地や自宅で利用している土地を「自用地」といいます。
「自用地」は、評価減がなく路線価の100%で評価されます。それに対し、賃貸住宅が建てられている土地のことを「貸家建付地」といいます。
賃貸住宅が建っていることで、土地の利用に制限を受けるという理由から、利用に制限を受けない「自用地」に対して、「貸家建付地」は評価額を下げることができます。
「貸家建付地」の計算式は以下の通りとなります。
貸家建付地評価額=自用地評価×{1-(借地権割合×借家権割合×賃貸割合)}
借地権割合は国税庁の路線価図を見ると分かるようになっています(路線ごとに30%~90%の範囲で設定)。
また、借家権割合は全国一律30%と決められています。
賃貸割合は相続時点での入居率が適用され、満室であれば「1」、入居率が50%であれば「0.5」を乗じます。
例1:自用地評価3,000万円(時価3,750万円)、借地権割合50%、入居率100%の賃貸住宅用の土地
3,000万円×(1-0.5×0.3×1)=2,550万円
例2:自用地評価3,000万円(時価3,750万円)、借地権割合50%、入居率50%の賃貸住宅用の土地
3,000万円×(1-0.5×0.3×0.5)=2,775万円
土地の評価額は、時価(3,750万円)に対して、およそ65%程度で評価されます(入居率100%の場合)。
賃貸住宅の評価額は!?
賃貸住宅は「貸家」と分類され、計算式は次の通りです。
貸家の評価額=固定資産税評価額×{1-(借家権割合×賃貸割合)}
例3:固定資産税評価額3,500万円、入居率が100%の賃貸用建物
3,500万円×(1-0.3×1)=2,450万円
例4:固定資産税評価額3,500万円、入居率50%の賃貸用建物
3,500万円×(1-0.3×0.5)=2,975万円
固定資産税評価額が建設費の50%だったとすると、建設費(7,000万円)に対して、35%程度で評価されます(入居率100%の場合)。
相続税節税効果の検証
では、賃貸住宅を建てて相続した場合に、どの程度の相続税を下げることができるのか例をあげて検証してみます。
【計算の条件】
①現金1億円で賃貸住宅を建築
②土地の時価3,000万円
③建物の建設費7,000万円
③土地の借地権割合50%
④満室の状態で相続
⑤対策前の遺産総額は3億円
⑥相続人は配偶者と子供2人
【土地の評価額】
路線価は時価の8割を目途に定められているので、「自用地」として相続税評価額は、時価3,000万円×80%=2,400万円
「貸家建付地」としての評価減が可能となり、以下の評価額となります。
2,400万円×(1-0.5×0.3×1)=2,040万円(土地の相続税評価額)
【建物の評価額】
建物は固定資産税評価額で評価され、今回の場合、建設費の50%の評価とします。
7,000万円で建設した建物の固定資産税評価額は3,500万円。
さらに「貸家」としての評価を下げることができます。
3,500万円×(1-0.3×1)=2,450万円(建物の相続税評価額)
【合計】
土地の相続税評価額2,040万円+建物の相続税評価額2,450万円=賃貸住宅の相続税評価額4,490万円
1億円の現金で賃貸住宅を建築することにより評価額を4,490万円までに下げることができます。(5,510万円の評価減)。
【相続税の節税効果】※下記早見表参照
遺産総額3億円の相続税:2,860万円
遺産総額2.5億円の相続税:1,985万円
5,000万円の評価減による相続税節税効果:875万円
相続税の計算においても入居率の確保が重要
相続税の計算上、賃貸住宅を建築・購入すると、評価が大幅に下がり、相続税対策に有効だといういうことは理解できたと思いますが、建築・購入した賃貸住宅が相続税の節税効果以上に赤字を出していては本末転倒です。
また、高い入居率を保つことは、相続税評価額を計算するうえでも有利に働きます。
相続税対策が目的であっても、周辺の物件の状況やエリア特性をしっかりとリサーチし、管理会社と協力しながら、入居率を上げていくためのリフォームや修繕、設備のグレードアップなどを実行していくことがとても重要となります。
最後に
相続税は、近年、増税傾向にあります。
2015年には基礎控除額が大幅に縮小されました。
さらに、2024年からは、相続税対策として有効であった贈与についても改正(贈与を受けた財産の相続財産への加算される期間が3年から7年に伸びます)が行われます。
今後は、贈与を活用した相続税対策もしづらくなりそうです。
賃貸住宅を利用した相続税対策も改めて脚光を浴びそうですが、賃貸住宅を利用した過度な相続税対策に対して、税務当局も目を光らせています。
賃貸住宅を活用した相続税対策をお考えの方は、必ず、税務の専門家である税理士の意見を聞きながら慎重に計画をするようにお願いします。
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